プレミアリーグの第3節までは
リーグで最もシャープでクリエイティブな攻撃的MFはリンガードではなく、ムヒタリアンだったことは間違いないだろう。
(※本記事はBleacher Report の記事を翻訳&編集しています)
ムヒタリアンの失速
ユナイテッドがウェスト・ハム、スウォンジー、レスターを倒した3試合で
計247分の出場時間を得たムヒタリアンは、素晴らしい5つのアシストを決めてみせた。
ムヒタリアンは鮮烈なスタートを切り、
それはイングランドという慣れない土地でのプレーでパフォーマンスにムラが出てしまうのではないかという、多くの人が懸念していたことに対しての回答かのように見えた。
モウリーニョ監督は昨年度16-17シーズンにはムヒタリアンの出場を制限し、その手法が功を奏し、彼は本来の自身の色を発揮し始めた。
しかし、今シーズンの前半戦においてモウリーニョの中盤を支えていたのはムヒタリアンではなかった。
彼はポジションの確保に失敗してしまったのだ。ゲームから頻繁に消え、ほとんどインパクトを残すことができなかった結果、ベンチに置かれるだけでなくメンバーに含まれないことまで出てきた。
彼は今シーズンのここまでで、アシストは16回の試みで5アシストという記録から伸ばせていない上に、ゴールも2つしか決めていない。
11月28日に行われたアウェイでのワトフォード戦から、ムヒタリアンは負傷のアナウンスもなしに5試合連続でメンバーから漏れることになった。
リンガードの台頭
ワトフォードでの夜、結果的にユナイテッドの中盤の序列は変化を迎えることとなった。
ムヒタリアンのポジションで出場したジェシー・リンガードは、
監督の戦術的な指示を受けて空いているスペースを有効に利用することに成功した。
その試合でリンガードは一つのアシストとゴールオブザシーズン候補の素晴らしいゴールを決め、
さらに4日後のアーセナル戦でも素晴らしいコンディションを維持してゴールを決めてみせた。
ムヒタリアンが足踏みをしている間に、
”メシー・リンガード (Messi Lingard)”
はサポーターにとって英雄のようになっていた。
データ上では、彼ら二人がチームにもたらしているものに大きな違いはないのだが、
結果を見ると大きな差がある。
リンガードはオールドトラフォードで愛されるために他のアカデミー出身の選手よりも多くの努力を積み重ね、
ここ数年で着実にサイドのプレイヤーとしてその実力を認められてきた。
重要な試合であるほどチームに貢献するという特性を除いて考えても、
最近のリンガードの活躍は、サポーターの指示を集める理由として十分なものである。
リーグ戦での出場時間747分で6ゴール4アシストという結果は傑出したものだ。
この数字は言わば表面的なものさしであり、リンガードという選手がどのような選手であるのかを決定するものではない。
しかし、サポーターがリンガードを受け入れるその入り口としては十分な役割を果たしていると言える。
また、彼の試合での目立ちにくい働きや中盤でのプレーは以前と比べサポーターの理解を得られるようになってきたのではないだろうか。
リンガードの出場しているときのユナイテッドのパフォーマンスと出場していないときのそれとは、まるで明るい昼と暗い夜ほどの差がある。
火曜日に行われたバーンリー戦はその典型である。
流動性を欠き、一貫した脅威を与えることも叶わず0-2とリードを許して迎えたハーフタイムにリンガードはピッチに送り出され、チームに勝ち点をもたらす2ゴールを決めて期待に応えてみせた。
ムヒタリアンと比較すると見えてくるリンガードの魅力とは
3バックや4バック、2枚のストライカーの背後に10番を置く形や通常の4-2-3-1など、
モウリーニョが採用するいかなるフォーメーションにおいても、
リンガードとムヒタリアンは概ね同じような役割を任せられる。
具体的には、10番のポジションでプレーし、カウンターの際は可能ならばいつでもスペースに走り込むことや、スピードと推進力を持ってユナイテッドを押し上げること、
オフザボールでの活力を活かして相手にとって難しい局面を作り出すことといったものだ。
ロメル・ルカクが相手のディフェンダーを圧倒し、
マーカス・ラッシュフォードやアントニー・マルシャルのスピードがサイドにあるといった状況では、
攻撃的ミッドフィールダーは広いスペースでプレーすることができる。
ユナイテッドが見せるショートカウンターでは、
多くの選手がスピードを緩めることなく前線に走り抜けており、選手の能力や特徴にフィットした戦術になっていることが伺える。
リンガードが前線に駆け上がり、左右に動きパスを引き出し、パスをつなぐために三角形を作り出し、ボールを回復するために絶えずプレスをかけ続けるといった役割を担っているのに対し、
ムヒタリアンは試合から消えることがあまりに多すぎる。
彼らのポジションはボールを素早く前線に送り出す際に重要なポジションであり、試合から消えることなどはあってはならない。
カウンターやスペースに入り込んで行くにあたってムヒタリアンはボールロストが多く、失望さえ感じさせた。
確かに、彼が相手にとって大きな脅威となった試合もあった。
しかし、多くの場面で彼は相手から頻繁にタックルを受け、プレスによって簡単にボールを失い、ときに不器用にも相手選手に向かって突っ込んでいった。
ポゼッションの場面においては、ムヒタリアンの与えるインパクトはいくらかマシなものだった。
しかし彼が調子を落とすと、彼は日増しにボールに対して弱気になっていくように見えた。
フアン・マタと効果的にポジションを交換もしたが、もたらしたものは多くなかった。
今から振り返れば、シーズン最初の3試合で彼が創り出した5つのチャンスがたまたまゴールに結びついただけであり、その働きは過大評価されていたと言われても仕方ないだろう。
このようなムヒタリアンの状態と比較すると、リンガードがチームにもたらした一連のコンビネーションや運動量、流動性やゴールは素晴らしいものだった。
また、ある選手の評価が落ちているときというのは、不安からか他の選手の評価が上がりやすいというのもあったかもしれない。
モウリーニョが気に入るのは当然
ムヒタリアンを一次元的な選手だとすると、リンガードは多次元的な選手だ。
リンガードはターンや、パス、オフザボールの動きなどあらゆるプレーに360度全ての範囲を活用することができる。
スペースへの猛烈な駆け上がりや重要なゴールを決める勝負強さ、そして判断の質の高さが彼の特徴である。
しかし、(バーンリー戦で見せたような)ゴールを奪わんとするボックス内への飛び込みや、
(WBA戦で見られたような)中盤を動き回り自身のためにスペースを生み出すプレー、
絶え間無く動き続けるといったものこそが彼が万能プレイヤーたる所以である。
モウリーニョがリンガードを気に入ったことは当然であったとすら言える。
創造性、運動量、モウリーニョのカウンター戦術への適性の3つは、
彼が選手を獲得しようとする際にチェックする三大要素だ。
リンガードはこのうち最後の2つをすでに兼ね備えていた。
しかし、今シーズンに入ってリンガードは唯一欠けていた創造性を身につけ、それらを素晴らしい一貫性を持って見せつけている。
彼が現在のプレーを継続できるかどうかが、
彼がパッとしない選手で終わってしまうのか、
遅咲きのトップレベルの選手が開花して行くかの分かれ目になるだろう。
12が27日、オールドトラフォードで0-2とバーンリーにリードを許して迎えたハーフタイム、
状況を打開するためにモウリーニョはムヒタリアンとリンガードの二人をピッチに送り出した。
そのうち片方は気を引き締めて2つのゴールを沈めて見せ攻撃を牽引した。
しかし他方はいくつか良いタッチを見せたもののインパクトには欠けていた。
ご存知の通り、前者がリンガード、後者がムヒタリアンであるのだが、
9月にこんなことを言っていたらおそらく誰も信じてくれなかっただろう。